2024年に大幅改正された「新NISA」制度が始まり、約1年が経過しました。2025年現在、新NISAは多くの投資家に活用されています。特に「つみたてNISA」から「新NISA」への移行を検討している方やこれから資産形成を始めたい方にとって、両者の違いを理解することは重要です。
この記事では、つみたてNISAと新NISAの違いを詳しく解説し、2025年時点での最新情報や活用方法についても紹介します。資産形成の第一歩として、ぜひ参考にしてください。
NISA(ニーサ)は「少額投資非課税制度」の略称で、2014年から始まった制度です。NISAの最大の特徴は、投資で得た利益(売却益や配当金など)が非課税になることです。
通常、株式投資や投資信託の運用で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で行った投資については、一定の条件のもとで税金がかかりません。
旧NISA制度(2023年まで)
2023年までのNISA制度は、主に以下の2種類がありました。
一般NISA
年間投資上限額が120万円で、非課税保有期間が5年間。株式や投資信託など、幅広い金融商品に投資可能。
つみたてNISA
年間投資上限額が40万円で、非課税保有期間が20年間。金融庁認定の投資信託のみが対象。
2023年までは「一般NISA」と「つみたてNISA」を同時に利用することはできず、年単位でどちらかを選ぶ必要がありました。
新NISA制度(2024年以降)
2024年1月から始まった「新NISA」では、制度が大幅に改正され、使い勝手が向上しました。主な変更点としては、非課税保有期間が無期限になったこと、非課税投資枠が拡大したこと、そして「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できるようになったことなどが挙げられます。
つみたてNISAと新NISAの主な違いを、表にまとめてみました。
項目 | つみたてNISA(旧制度) | 新NISA(2024年以降) |
---|---|---|
制度期間 | 2023年まで | 恒久化(期限なし) |
年間投資上限額 | 40万円 | つみたて投資枠:120万円 成長投資枠:240万円 合計:360万円 |
非課税保有期間 | 20年間 | 無期限 |
生涯非課税保有限度額 | 800万円(40万円×20年) | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) |
投資対象商品 | 長期・積立・分散投資に適した投資信託 | つみたて投資枠:つみたてNISAと同様 成長投資枠:株式、ETF、REITなど幅広い商品 |
購入方法 | 積立投資のみ | つみたて投資枠:積立投資のみ 成長投資枠:積立・一括投資の両方可能 |
併用可否 | 一般NISAとの併用不可 | つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能 |
投資枠の復活 | なし | 売却した場合、翌年に売却した金額分の投資枠が復活 |
新NISA制度はつみたてNISAと比較して、投資枠の拡大や非課税期間の無期限化など、より柔軟で長期的な資産形成に適した制度となっています。
新NISA制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの投資枠が設けられています。この2つの投資枠は、それぞれ特徴が異なります。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)
つみたて投資枠は、旧つみたてNISAから引き継がれた制度で、長期・積立・分散投資を目的としています。
- 年間投資上限額:120万円(旧つみたてNISAの40万円から3倍に拡大)
- 投資対象商品:金融庁が定めた条件を満たす投資信託(約180本程度)
- 購入方法:積立投資のみ(一括投資は不可)
- 非課税保有限度額:1,800万円(成長投資枠と合わせて)
- 代表的な商品:インデックスファンド、バランスファンドなど
つみたて投資枠は、少額から始められる積立投資に特化しており、投資初心者でも始めやすいのが特徴です。また、商品数が限られているため、選択に迷いにくいというメリットもあります。
成長投資枠(旧一般NISA)
成長投資枠は、旧一般NISAから引き継がれた制度で、より幅広い商品に投資できるのが特徴です。
- 年間投資上限額:240万円(旧一般NISAの120万円から2倍に拡大)
- 投資対象商品:上場株式、ETF、REIT、投資信託など幅広い商品
- 購入方法:積立投資と一括投資の両方が可能
- 非課税保有限度額:1,200万円(つみたて投資枠と合わせて1,800万円まで)
- 代表的な商品:国内外の個別株式、ETF、REIT、アクティブファンドなど
成長投資枠は、より積極的な投資戦略を取りたい投資家や、個別株式に投資したい投資家に適しています。一括投資も可能なため、まとまった資金を一度に投資することもできます。
新NISA制度では、年間投資上限額と生涯非課税保有限度額が大幅に拡大しました。これらの拡大した非課税枠を賢く活用するためのポイントを紹介します。
年間投資上限額の活用法
新NISAでは、つみたて投資枠(120万円)と成長投資枠(240万円)を合わせて、年間最大360万円まで投資することができます。
基本的な積立投資
つみたて投資枠で毎月10万円の積立投資を行い、安定的に資産を積み上げる
個別株やチャンス銘柄への投資
成長投資枠で成長が期待できる個別株式やETFに投資し、より高いリターンを狙う
柔軟な投資戦略
市場の急落時に成長投資枠を活用して割安銘柄に一括投資するなど、状況に応じた対応
生涯非課税保有限度額の活用法
新NISAでは、生涯非課税保有限度額が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)となりました。
- 長期的な視点での資産形成:非課税保有期間が無期限となったため、複利効果を最大限に活かすために早くから投資を始め、長期間保有する
- 売却した場合の投資枠の復活を活用:保有商品を売却した場合、その売却額の簿価相当額分が翌年の投資枠として復活するため、非課税枠を効率的に使える
- つみたて投資枠と成長投資枠のバランスを考慮:成長投資枠は1,200万円までという制限があるため、つみたて投資枠も最低600万円は活用する
2025年現在における新NISA制度の最新情報や動向について解説します。
新NISA口座開設数の増加
2024年に始まった新NISA制度は多くの人に支持され、口座開設数が大幅に増加しています。金融庁の発表によると、2024年9月末時点でのNISA口座数は2,509万口座となり、2023年末から384万口座増加しました。
2025年に入っても、新NISA口座の開設数は順調に増加しており、資産形成への関心の高まりを示しています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響で貯蓄が増えた家計が投資に向かう動きが強まっています。
2025年の新NISA口座変更手続き
2025年の新NISA口座を別の金融機関に変更したい場合は、2024年10月1日から2025年9月30日までの期間に手続きを行う必要があります。
2025年から新たに新NISA口座を開設する場合や、別の金融機関に変更する場合は、早めに手続きを行うことが重要です。年始から投資を始めたい方は、金融機関の年末年始のスケジュールを確認しておくことをおすすめします。
2025年からの複数NISA口座保有の実質可能化
2025年から、実質的に複数のNISA口座を保有することが可能になります。1年ごとに金融機関を変更することで、複数の金融機関でNISA口座を持つことができるようになるのです。
金融機関ごとの特徴やサービスを活用しながら、資産を分散させることができます。ただし、同一年に複数の金融機関でNISA口座を開設・利用することはできないため、年単位での金融機関変更が必要となります。
2023年までにつみたてNISA口座を開設していた方が、新NISA制度へ移行する方法について解説します。
自動移行について
2023年末でつみたてNISA制度は終了しましたが、つみたてNISA口座を開設していた方は、基本的に自動的に新NISA口座が開設されています。
つみたてNISAで保有していた投資信託はそのまま新NISAに移行(ロールオーバー)することはできず、非課税期間終了までは旧制度のままで管理されます。
旧つみたてNISAでの保有資産の扱い
旧つみたてNISAで保有していた投資信託は、以下のように扱われます。
非課税期間中は引き続き非課税
購入時点から20年間の非課税期間が終了するまで、引き続き非課税で保有可能
非課税期間終了後の選択肢
非課税期間終了時は課税口座に払い出される(新NISAへのロールオーバーは不可)
新NISAでの新規投資
つみたて投資枠(120万円)と成長投資枠(240万円)の両方を活用して新たに投資開始
移行時の注意点
- 投資枠の考え方が変わる:つみたてNISAの年間40万円から、新NISAでは合計360万円の投資枠になるため、投資戦略の見直しが必要
- 投資対象商品の違い:つみたて投資枠は旧制度と同様だが、成長投資枠では株式やETFなども購入可能
- 金融機関の選択:新NISAへの移行を機に、各金融機関のサービス内容や手数料を比較して最適な金融機関を選択
新NISA制度を最大限に活用するためのポイントについて解説します。
1. 長期投資の視点を持つ
新NISAでは非課税保有期間が無期限になったため、より長期的な視点での投資が可能になりました。
- 複利効果を活かす:長期間投資することで、「利子に対する利子」を得る複利効果を最大限に活用
- 時間分散のメリット:定期的な積立投資で「ドルコスト平均法」の恩恵を受ける
- 短期的な市場変動に左右されない:長期的な成長を見据えた投資を継続
2. つみたて投資枠と成長投資枠の適切な配分
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるため、自分の投資スタイルや目標に合わせた適切な配分を考えることが重要です。
投資家タイプ | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | 特徴 |
---|---|---|---|
初心者向け | 100万円 | 20万円 | リスクを抑えた安定的な投資 |
積極投資家向け | 60万円 | 200万円 | より高いリターンを狙う投資 |
バランス型 | 80万円 | 120万円 | 安定性と成長性のバランス |
若いうちは成長投資枠の割合を多めにし、年齢が上がるにつれてリスクを抑えるためにつみたて投資枠の割合を増やすなど、ライフステージに合わせた調整も検討しましょう。
3. 投資枠復活のメリットを活用
新NISAでは、保有している商品を売却した場合、その売却額の簿価相当額分が翌年の投資枠として復活します。
- パフォーマンスの悪い商品の入れ替え:長期間パフォーマンスが悪い商品を売却し、より期待できる商品に入れ替え
- 資産配分の調整:市場環境やライフステージの変化に合わせて資産配分を調整
- 利益確定と再投資:大きく値上がりした商品の利益を確定させ、翌年の投資枠として復活活用
4. 非課税保有限度額を意識した長期計画
- 投資ペースの設定:毎年の投資金額を計画的に設定し、非課税枠を長期間にわたって活用
- 成長投資枠の上限を意識:成長投資枠は1,200万円までという上限があるため、つみたて投資枠も最低600万円は活用
- 複数年にわたる投資計画:売却と再投資を活用することで、長期間にわたって非課税メリットを享受
2024年に始まった新NISA制度は、旧つみたてNISAと比較して大幅に使い勝手が向上しました。年間投資上限額の拡大、非課税保有期間の無期限化、つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能化など、より柔軟で長期的な資産形成に適した制度となっています。
新NISA制度の主な改善点
投資枠の大幅拡大
- 年間投資上限額:40万円 → 360万円(9倍に拡大)
- 生涯非課税保有限度額:800万円 → 1,800万円(2.25倍に拡大)
制度の柔軟性向上
- 非課税保有期間:20年間 → 無期限
- 投資枠の併用:不可 → つみたて投資枠と成長投資枠の併用可能
- 投資枠の復活:なし → 売却時の投資枠復活機能
2025年の新機能
- 実質的な複数NISA口座保有が可能
- より柔軟な金融機関選択
- 継続的な制度改善と利便性向上
2025年においても、新NISA制度は多くの投資家に活用されており、口座開設数は順調に増加しています。また、2025年からは実質的に複数のNISA口座を保有することも可能となり、より柔軟な投資戦略を取ることができるようになりました。
新NISA制度を活用する際は、長期投資の視点を持ち、つみたて投資枠と成長投資枠の適切な配分を考え、投資枠復活のメリットを活用することで、より効率的な資産形成を行うことができます。
資産形成の第一歩として、ぜひ新NISA制度を活用してみてください。長期的な視点で着実に資産を育てていくことが、将来の経済的な安心につながります。
※本記事の内容は2025年5月時点の情報に基づいています。制度内容は変更される可能性がありますので、最新情報は金融庁や各金融機関のウェブサイトでご確認ください。
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