「生命保険に加入したものの、このままでよいのだろうか」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。生命保険は一度加入すれば安心というわけではなく、ライフステージの変化に合わせて定期的な見直しが必要です。この記事では、生命保険の見直しに最適なタイミングやポイント、具体的な方法などを詳しく解説します。
生命保険は、「もしものときにお金で困ること」に備えるためのものです。しかし、人生は常に変化するものであり、加入時に必要だった保障内容が、現在のライフステージや家族構成に合わなくなっていることも少なくありません。
見直しが必要な主な理由
- ライフステージの変化: 結婚、出産、住宅購入など、生活環境が変わると必要な保障も変わります。
- 保険商品の進化: 時代とともに保険商品も進化し、新しい特約や保障内容が登場しています。
- 保険料負担の適正化: 不要な保障に保険料を支払っている可能性があります。
- 公的保障制度の変更: 健康保険制度や年金制度などの変更により、必要な保障が変わることがあります。
生命保険に加入した理由を思い出してみましょう。「人から勧められたから」「なんとなく安心だから」といった理由で加入し、そのままになっているならば、もったいない保険料を支払っているかもしれません。自分や家族のために最適な保障を準備するためにも、定期的な見直しが重要なのです。
生命保険の見直しに最適なタイミングは、大きく分けて以下の5つです。
ライフイベントが起きたとき
結婚、出産、住宅購入、子どもの独立など、ライフステージが変化したときは、保険の見直しを検討する絶好のタイミングです。
収入や支出に変化があったとき
昇進や転職で収入が増えた場合、あるいは支出が増えた場合は、保障内容を見直すチャンスです。
保険の更新や満期を迎えるとき
定期保険など更新型の保険では、更新時に保険料が上がることが一般的です。更新前に保障内容を確認しましょう。
年齢の節目を迎えるとき
30歳、40歳、50歳など、年齢の節目を迎えるときも見直しのタイミングです。
定期的な見直し(3〜5年に一度)
特別なライフイベントがなくても、3〜5年に一度は定期的に見直すことをおすすめします。
ライフステージによって、見直すべきポイントは異なります。ここでは、主なライフステージごとの見直しポイントを解説します。
独身時代
独身時代は、扶養する家族がいないため、死亡保障の必要性は比較的低いでしょう。すでに死亡保険や医療保険に加入している場合は、本当に必要かどうかを再検討し、不要であれば解約することも選択肢の一つです。
- 医療保険や就業不能保険など、自分自身を守る保障に重点を置く
- 死亡保障は最小限に抑える
結婚後
結婚してパートナーができると、万一の際にパートナーの生活を支える保障が必要になります。特に収入差がある場合は、収入の多い配偶者が死亡保障を充実させるべきでしょう。
- 二人の生活を支えるための死亡保障を検討
- 共働きの場合は、それぞれの収入バランスを考慮
子育て期
子どもが生まれると、教育費や養育費など、将来必要となる費用が増えます。万一の際に残された家族が経済的に困らないよう、死亡保障を手厚くする必要があるでしょう。
- 子どもの教育費や養育費を考慮した死亡保障
- 教育資金準備のための貯蓄性保険の検討
- 子どもの医療保障の充実
住宅購入時
マイホームを購入し住宅ローンを組む場合、通常は団体信用生命保険に加入します。これにより、万一の際にはローンが返済されるため、住宅費用分の死亡保障を減額できる可能性があります。
- 団体信用生命保険でカバーされる住宅ローン分の死亡保障を見直す
- 住宅関連費用(修繕費用など)の準備
子どもの独立期
子どもが独立すると、養育費や教育費の負担がなくなります。それに伴い、必要な死亡保障額も減少するため、保険の見直しをするタイミングです。
- 死亡保障の減額
- 老後資金の準備や介護保障の充実
退職・老後期
退職すると収入が大きく減少します。これまでの貯蓄や退職金、年金などで老後資金が十分に用意できていれば、死亡保障は最低限でよいでしょう。
- 死亡保障の大幅な減額や解約
- 医療保障や介護保障の充実
生命保険の見直し方法には、主に以下の4つがあります。状況に応じて最適な方法を選びましょう。
1. 追加契約
現在の契約はそのまま維持し、新たに別の保険に加入する方法です。保障を充実させたい場合に適しています。
メリット | デメリット |
---|---|
現在の契約は継続できる 保障内容を自由に選べる |
複数の契約を管理する手間がかかる 全体の保険料負担が増える可能性がある |
2. 転換(下取り)
現在の契約を解約し、その解約返戻金を新しい契約の保険料に充当する方法です。同じ保険会社内での見直しに使われます。
メリット | デメリット |
---|---|
解約返戻金を無駄にせず、新契約に活用できる 一から新規契約するよりも保険料負担が軽減される |
健康状態によっては新契約に加入できない可能性がある 現在の契約が消滅する |
3. 減額・特約解約
現在の契約の保険金額を減らしたり、特約を解約したりする方法です。保障は必要だが、保険料負担を軽減したい場合に適しています。
メリット | デメリット |
---|---|
契約自体は継続できる 保険料負担を軽減できる |
保障内容が限定される 特約の種類によっては、同時に他の特約も解約しなければならない場合がある |
4. 解約・乗り換え
現在の契約を完全に解約し、新たな保険に加入する方法です。保障内容を大きく変えたい場合に適しています。
メリット | デメリット |
---|---|
自分のニーズに合った保険に自由に加入できる 保険料負担の適正化が図れる |
解約返戻金が少ない場合がある 健康状態によっては新契約に加入できない可能性がある |
生命保険の見直しで最も重要なのは、必要保障額(いくら保障が必要か)を正確に把握することです。ここでは、必要保障額の基本的な計算方法を紹介します。
基本的な計算式
必要保障額は、以下の式で計算できます。
必要保障額 = 支出見込額 – 収入見込額
支出見込額(万一の際に必要となるお金)
- 遺族の生活費: 配偶者や子どもが生活していくための費用
- 子どもの教育費: 幼稚園から大学までの教育費
- 住宅関連費用: 住宅ローンや家賃、修繕費用など
- 葬儀費用・お墓代: 一般的に200〜300万円程度
収入見込額(万一の際に得られるお金)
- 遺族年金: 遺族基礎年金、遺族厚生年金など
- 死亡退職金・弔慰金: 勤務先から支給される可能性のあるもの
- 配偶者の収入: 配偶者が働いている場合の収入
- 貯蓄・資産: 預貯金、投資、不動産など
具体的な計算例
例えば、35歳の会社員の夫(年収600万円)、35歳の専業主婦の妻、5歳と2歳の子ども2人という家族構成の場合:
- 妻の生活費(月10万円×12ヶ月×40年)= 4,800万円
- 子どもの生活費(月8万円×12ヶ月×子ども2人×それぞれ独立までの年数)= 約3,800万円
- 子どもの教育費(幼稚園〜大学まで、2人分)= 約2,500万円
- 葬儀費用・お墓代 = 300万円
- 支出見込額合計 = 約11,400万円
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金(月14万円×12ヶ月×子どもが18歳になるまでの年数)= 約4,000万円
- 死亡退職金(年収の3年分と仮定)= 1,800万円
- 貯蓄・資産 = 500万円
- 収入見込額合計 = 約6,300万円
11,400万円 – 6,300万円 = 5,100万円
この例では、約5,100万円の死亡保障が必要ということになります。ただし、これは一例であり、実際には家族構成や収入状況、将来設計などによって大きく異なります。
生命保険を見直す際は、以下の点に注意しましょう。
1. 解約・減額のタイミング
解約返戻金は契約からの経過年数によって変わります。一般的に、契約から短期間の場合は解約返戻金が少なく、長期間経過すると増えていく傾向があります。解約や減額を検討する際は、解約返戻金の金額を確認しましょう。
2. 健康状態の変化
新しい保険に加入する場合は、健康状態の告知(場合によっては医師の診査)が必要です。現在の契約後に健康状態が悪化している場合、新しい保険に加入できない、または特定の疾病について保障対象外となる可能性があります。
3. 予定利率の違い
特に貯蓄性のある保険(終身保険や養老保険など)では、契約時の予定利率が重要です。昔の契約ほど予定利率が高い傾向があり、解約して新しい保険に加入すると、貯蓄性能が落ちる可能性があります。
4. 保険料の比較
新しい保険に加入する場合、年齢が上がっている分、保険料が高くなる可能性があります。単純に保障内容だけでなく、保険料負担も含めて総合的に判断しましょう。
5. 契約の引継ぎや移行オプション
保険会社によっては、契約の引継ぎや移行オプションを用意している場合があります。例えば、定期保険から終身保険への移行などです。こうしたオプションを利用できれば、新たな健康告知なしで保障内容を変更できる可能性があります。
生命保険の見直しは、専門知識が必要な複雑な作業です。自分だけで判断するのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーや保険の専門家に相談するメリットがあります。
プロに相談するメリット
- 客観的なアドバイス: 自分では気づかない視点からのアドバイスが得られます。
- 最新情報の入手: 保険商品や制度の最新情報を知ることができます。
- 複数の選択肢の提示: 自分のニーズに合った複数の選択肢を比較検討できます。
- 必要保障額の精密な計算: ライフプランに基づいた正確な必要保障額を算出できます。
- 継続的なサポート: ライフステージの変化に応じた継続的なアドバイスが受けられます。
相談先の選び方
相談先を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- 中立的な立場か: 特定の保険会社に所属していない独立系のアドバイザーかどうか
- 資格の有無: FP(ファイナンシャルプランナー)などの資格を持っているか
- 相談料: 無料相談か有料相談か、料金体系はどうなっているか
- 実績と評判: 相談実績や口コミ評判はどうか
多くの保険代理店や保険ショップでは、無料で相談に応じています。また、保険会社のカスタマーサービスでも、契約内容の見直しについて相談できます。
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