「今の金利情勢なら住宅ローンを借り換えたほうがいいのかな?」「借り換えると本当にお得になるの?」このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。住宅ローンの返済期間は長く、わずかな金利差でも総返済額に大きな影響を与えます。しかし、借り換えには手数料などの諸費用もかかるため、単純に「金利が下がるからお得」とは言い切れない場合もあります。
この記事では、住宅ローンの借り換えを検討している方に向けて、借り換えのメリット・デメリット、失敗しない借り換え先の比較ポイント、そして具体的なシミュレーション例を解説します。
住宅ローンの借り換えとは、現在返済中の住宅ローンを一度完済し、新たに別の金融機関で住宅ローンを組み直すことです。主な目的は、より有利な条件(低金利など)のローンに乗り換えることで、返済負担を軽減することにあります。
借り換えをする際は、現在契約している金融機関とは別の金融機関と新たに契約を結ぶことになります。同じ金融機関内での借り換えはできないため注意が必要です。また、借り換え時には新規の住宅ローンと同様に審査があり、諸費用も発生します。
住宅ローンの借り換えには、以下のようなメリットがあります。
金利が下がることによる総返済額の削減
より低い金利のローンに乗り換えることで、返済総額を大幅に削減できます。金利0.8%の差で200万円以上の削減も可能です。
毎月の返済額の軽減
金利が下がることで、毎月の返済額も減少します。家計の負担が軽くなり、浮いたお金を他の用途に回すことができます。
金利タイプの変更によるリスク軽減
変動金利から固定金利への変更で、将来の金利上昇リスクを回避できます。金利環境に合わせた柔軟な対応が可能です。
団体信用生命保険の保障内容の充実
三大疾病や八大疾病、介護状態の保障など、より充実した団信に加入できる可能性があります。
返済期間の調整
ライフプランに合わせて返済期間を調整できます。短縮して総返済額を減らすか、延長して月々の負担を軽減するかを選択可能です。
メリットがある一方で、借り換えには以下のようなデメリットや注意点もあります。
1. 諸費用がかかる
借り換えには、新たな住宅ローンを組む際の事務手数料、保証料、登記費用、印紙税などの諸費用がかかります。これらの費用は、借入金額によって異なりますが、一般的には30万円〜100万円程度です。
2. 再度の審査が必要となる
借り換えは新たな住宅ローン契約となるため、改めて審査を受ける必要があります。年齢や収入状況、勤続年数、他の借入状況などによっては、審査に通らない可能性もあります。
3. 手続きの手間と時間がかかる
借り換えには、新規のローン申込み、現在のローンの完済手続き、抵当権の設定変更など、複数の手続きが必要です。これらの手続きには時間と労力がかかります。
4. 一部の特典や優遇が失われる可能性
現在利用している住宅ローンに特別な金利優遇や特典がある場合、借り換えによってそれらを失う可能性があります。例えば、フラット35Sの金利優遇などは、借り換え後に再度適用されない場合があります。
住宅ローンの借り換えを検討する最適なタイミングは、以下のような場合です。
- 金利差0.3%以上:現在の住宅ローン金利と借り換え先の金利差が0.3%以上ある
- 借入残高1,000万円以上:借入残高が多いほど、金利引き下げの効果は大きくなる
- 残りの返済期間10年以上:返済期間が長ければ長いほど、金利引き下げの効果は大きくなる
その他の検討タイミング
- 固定金利期間が終了するとき:固定金利特約型の住宅ローンの固定金利期間終了時
- 金利環境が変化したとき:金融政策の変更などにより金利環境が大きく変化した場合
- 収入状況が変わったとき:昇進や転職などで収入が変化した場合
住宅ローンの借り換え先を選ぶ際は、以下のポイントを比較検討しましょう。
1. 金利の種類と水準
最も重要なのは金利の種類(変動金利・固定金利)と水準です。変動金利は一般的に固定金利よりも低く設定されていますが、将来の金利上昇リスクがあります。自分のリスク許容度に合わせて選びましょう。
2. 諸費用(事務手数料・保証料など)
金融機関によって、事務手数料や保証料の金額は大きく異なります。金利だけでなく、これらの諸費用も含めた実質コストで比較することが重要です。
3. 団体信用生命保険(団信)の保障内容
住宅ローンに付帯する団体信用生命保険の保障内容も重要な比較ポイントです。一般的な死亡・高度障害保障だけでなく、三大疾病や八大疾病特約、介護特約などがあるかどうかを確認しましょう。
4. 繰上返済手数料
将来的に繰上返済を検討している場合は、繰上返済手数料の有無や金額を確認しましょう。インターネットバンキングでの繰上返済が無料の金融機関も増えています。
5. 金利優遇条件
多くの金融機関では、給与振込口座の指定や、クレジットカードの契約などの条件を満たすことで、金利優遇を受けられる場合があります。
6. 返済期間と返済方法の柔軟性
返済期間の上限や、ボーナス払いの有無、返済方法(元利均等返済・元金均等返済)の選択肢があるかどうかも確認しましょう。
7. 各種特約や契約条件
住宅ローンには、様々な特約や契約条件があります。例えば、団信の免除特約、返済支援特約、金利キャップ特約などです。
住宅ローンを借り換える際には、新規にローンを組む場合と同様に様々な費用がかかります。一般的な費用の相場と内訳は以下の通りです。
費用項目 | 相場・内容 |
---|---|
事務手数料(融資手数料) | 定額型:3〜5万円程度 定率型:借入金額の2.2%程度 |
保証料 | 一括前払い型:借入金額の2%程度 金利上乗せ型:金利に0.2%程度上乗せ |
登記費用 | 抵当権抹消:1,000円/件 抵当権設定:借入金額の0.4% 司法書士報酬:5〜10万円 |
印紙税 | 1,000万円超5,000万円以下:2万円 |
火災保険料・地震保険料 | 10年で10〜20万円程度(建物により異なる) |
全額繰上返済手数料 | 3万円前後が一般的 |
これらの費用を合計すると、借入金額3,000万円の場合、諸費用の合計は30〜100万円程度になることが一般的です。ただし、金融機関によって大きく異なるため、事前に確認することが重要です。
具体的なシミュレーション例を見てみましょう。借入残高2,500万円、残りの返済期間20年のケースで、金利1.5%から0.7%に借り換えた場合の効果を計算します。
ケース1:諸費用を含めた借り換え効果
項目 | 現在の住宅ローン | 借り換え後 |
---|---|---|
借入残高・金額 | 2,500万円 | 2,500万円 |
金利 | 1.5%(固定金利) | 0.7%(固定金利) |
返済期間 | 20年 | 20年 |
毎月の返済額 | 約14.5万円 | 約12.1万円 |
支払利息総額 | 約402万円 | 約183万円 |
- 毎月の返済額減少:約2.4万円
- 支払利息の削減:402万円 – 183万円 = 219万円
- 借り換え諸費用:約60万円
- 実質的な削減効果:219万円 – 60万円 = 159万円
このケースでは、借り換え諸費用を差し引いても159万円のメリットがあるため、借り換えは有効と言えます。
ケース2:返済期間短縮型の借り換え
借り換えによって毎月の返済額を減らすのではなく、返済期間を短縮するケースも考えてみましょう。毎月の返済額はほぼ変わらないものの、返済期間が5年短縮されるため、総返済額は大幅に減少します。
住宅ローンの借り換え手続きは、以下のような流れで進みます。
借り換え先の検討と仮審査
複数の金融機関を比較検討し、借り換え先を決めて仮審査を申し込みます。
本審査の申込み
仮審査通過後、本審査を申し込みます。物件の担保評価なども行われます。
融資実行日の調整
現在のローンの完済日と新しいローンの融資日をうまく合わせる必要があります。
契約と完済手続き
新規ローンの契約を締結し、その資金で現在のローンを完済します。
返済開始
新しいローンの返済が始まります。返済日や返済方法を確認しておきましょう。
住宅ローンの借り換えで失敗しないためのポイントを紹介します。
1. 諸費用も含めた総コストで比較する
金利だけでなく、事務手数料や保証料などの諸費用も含めた総コストで比較することが重要です。金利が低くても諸費用が高い場合、結果的に損をする可能性があります。
2. 借り換え効果をシミュレーションする
借り換え前に、しっかりとシミュレーションを行い、本当にメリットがあるかを確認しましょう。多くの金融機関ではウェブサイト上でシミュレーションツールを提供しています。
3. 団体信用生命保険の保障内容を確認する
借り換えによって団体信用生命保険の保障内容が変わる可能性があります。特に持病がある場合などは、新たな保険に加入できないリスクもあるため、事前に確認しておきましょう。
4. 将来の返済計画を考慮する
将来的に繰上返済を予定している場合や、ライフイベントによって収入が変わる予定がある場合は、そうした将来の返済計画も考慮して借り換えを検討しましょう。
5. 金利動向を把握しておく
変動金利と固定金利のどちらを選ぶかは、将来の金利動向の予測も重要です。金融政策や経済情勢などのニュースにも注目しておきましょう。
6. 審査基準を事前に確認する
借り換えには新たな審査が必要です。年齢や収入、勤続年数などの審査基準を事前に確認し、審査に通る可能性を高めておきましょう。
7. 専門家のアドバイスを受ける
住宅ローンの借り換えは複雑な判断が必要です。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。
住宅ローンの借り換えは、金利環境や個人の状況によっては大きなメリットをもたらす可能性があります。しかし、諸費用や手続きの手間、審査のリスクなどもあるため、慎重に検討する必要があります。
借り換え検討時のチェックポイント
金利差と借入条件
- 現在の住宅ローンと借り換え先の金利差が0.3%以上あるか
- 借入残高が1,000万円以上、残りの返済期間が10年以上あるか
コスト比較
- 諸費用を含めた総コストで比較しているか
- 借り換え効果をシミュレーションで確認したか
将来計画
- 将来の返済計画や金利動向を考慮しているか
- 専門家のアドバイスを受けているか
これらのポイントを押さえて、自分にとって最適な借り換えプランを見つけることができれば、住宅ローンの負担を大きく軽減することができるでしょう。
ただし、借り換えは一度きりの選択ではありません。金利環境や自分の状況が変化した際には、再度借り換えを検討することも選択肢の一つです。定期的に自分の住宅ローンの状況を見直し、常に最適な返済計画を維持することが大切です。
※この記事は2025年5月時点の情報に基づいています。金利情勢や各金融機関の商品内容は変更される可能性がありますので、最新情報は各金融機関の公式サイトや窓口でご確認ください。
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